帯状疱疹とワクチンによる予防
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、水ぼうそうウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が体内に潜伏し、加齢やストレスなどで免疫が低下した際に再活性化して起こる病気です。左右どちらか一方の神経に沿って帯状に広がる赤い発疹(水ぶくれ)と強い痛みを伴い、夜も眠れないほどの痛みが続くこともあります。
日本人では80歳までに約3人に1人が経験するといわれ、発疹が治った後でも長期間痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」を生じることがあります。
ワクチンで帯状疱疹を予防しましょう
帯状疱疹ワクチンは、発症や重症化を防ぎ、帯状疱疹後神経痛のリスクを下げることが確認されています。50歳以上の方に特に推奨されており、2025年からは定期接種として公費助成も始まりました。
当院では、現在日本で承認されている2種類のワクチンを取り扱っています(対象は50歳以上)。
帯状疱疹ワクチンの種類と特徴
シングリックス®(不活化ワクチン)
- ワクチンの種類:
遺伝子組換えによって作られた帯状疱疹ウイルスの一部抗原を含む不活化ワクチンです。ウイルスそのものは含まず病原性がないため、免疫力が低下している方にも接種できます。アジュバント(免疫増強剤)を配合し、高い免疫効果を発揮します。 - 接種回数・間隔:
2回の筋肉内接種が必要です。1回目接種後、2ヶ月後に2回目を接種します(※2回目は遅くとも初回から6ヶ月以内に接種します)。十分な予防効果を得るには2回接種を完了する必要があります。 - 予防効果:
非常に高く持続的です。帯状疱疹の発症予防効果は50歳以上で約97%、70歳以上でも約90%にのぼります。さらに接種後少なくとも10年間は効果が持続し、10年後でも予防効果がおよそ80%程度保たれたとのデータがあります。また、帯状疱疹後神経痛の発症予防効果も高く、70歳以上では神経痛の発症を約85%抑制したとの報告があります。こうした高い有効性から、世界的にも帯状疱疹予防の第一選択肢とされます。 - 副反応:
注射部位の痛み・赤み、腫れなどの局所反応のほか、倦怠感(だるさ)、筋肉痛、発熱、頭痛など全身性の症状が出る場合があります。これらの副反応は一時的なもので、1~3日程度で改善することがほとんどです。シングリックスは生ワクチンに比べ副反応の頻度がやや高い傾向がありますが、いずれも重篤なものはまれで、安全性は確立されています。 - 接種できない方:
ワクチン成分に重度のアレルギーがある方は接種できません(詳しくは医師にご相談ください)。
乾燥弱毒生水痘ワクチン(生ワクチン)
- ワクチンの種類:
帯状疱疹の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスそのものを弱毒化(病原性を弱める)した生ワクチンです。水ぼうそうの予防接種にも使われてきたワクチンで、ウイルスの免疫をつけることで帯状疱疹の発症リスクを下げます。ただし、生ワクチンのため免疫力が低下している方(例:免疫抑制治療中の方)や妊娠中の方には接種できません。 - 接種回数・間隔:
1回の皮下注射で完了します(追加接種は基本的に不要です)。50歳以上であれば一度の接種で帯状疱疹予防効果が期待できます。 - 予防効果:
一定の効果がありますが、シングリックスと比べると低めです。帯状疱疹の発症予防効果は60歳以上で約50%と報告されており、時間の経過とともに免疫効果が低下します(接種後5年で約40%、8年後には30%前後まで低下)。したがって、生ワクチンでは時間が経つにつれて予防効果が薄れてしまう点に注意が必要です。すでに帯状疱疹にかかった経験のある方でも、再発予防のためにこの生ワクチンを接種することは有効です(帯状疱疹は約6.4%の人に再発が認められます)。 - 副反応:
注射部位の腫れ・赤み、軽い発疹やかゆみなどが起こる場合がありますが、シングリックスに比べると副反応の頻度は少なめとされています。重大な副作用は稀ですが、極めてまれにアナフィラキシー(重いアレルギー反応)などが報告されています。 - 接種できない方:
妊娠中の方、著しく免疫機能が低下している方(HIV感染症の重症例、強力な免疫抑制剤治療中の方など)には接種できません。また、ワクチン成分にアレルギーのある方も禁忌となります。接種後2ヶ月間は妊娠を避けてください。
ワクチン選択のポイント
- シングリックス(不活化ワクチン)は2回接種が必要で費用も高めですが、予防効果が非常に高く、免疫効果の持続期間も長いため、当院ではシングリックス接種を推奨しています。特に帯状疱疹のリスクが高まる高齢の方や、確実に予防したい方にはシングリックスが適した選択といえます。
- 生ワクチンは1回の接種で済み費用も安価ですが、効果の持続期間が短い点や接種できない条件がある点に留意が必要です。
接種回数・費用(自費、税込)
ワクチン種類 | 接種方法・回数 | 費用 |
---|---|---|
シングリックス(不活化) | 筋肉内注射・2回接種 (1 回目+2~6か月後に2回目) |
22,000 円/回 合計 44,000 円 |
生ワクチン | 皮下注射・1回接種 | 9,630円 |
盛岡市の公費助成(65歳以上)
ワクチン種類 | 自己負担額(助成後) |
---|---|
シングリックス | 11,800 円/回(計23,600円) |
生ワクチン | 4,400円 |
助成を受けるには対象年齢などの条件があります。詳細は当院受付または盛岡市の案内をご確認ください。
接種の流れ
完全予約制です
- 予約(WEBまたは電話)
- 診察・問診
- 接種(シングリックスは筋肉注射、生ワクチンは皮下注射)
- 院内で30分程度経過観察
- シングリックスの場合は 2回目の予約
帯状疱疹は予防できる時代です。とくに 50代以上の方は、ワクチン接種で将来の帯状疱疹リスクを減らしましょう。ご不明点があればお気軽にご相談ください。